福岡県大川市 松田耳鼻咽喉科医院 【患者さんとともに病気を治療する耳鼻科です】


西日本新聞に掲載されました。(2006年1月23日)

「集計結果を見て、最初は自分の誤診ではないかとさえ疑った」。

福岡県大川市の開業医、松田知愛医師(耳鼻咽喉科)は、十二年前の驚きをそう振り返る。
松田医師は大川市の学校医となって中学四校、高校三校(現在二校)で生徒の鼻アレルギー疾患を調べた。
その結果、中学で約五割、高校で約六割の生徒に鼻アレルギーの疑いが認められた。
以降も年々、疾患率が高まっているという。
「鼻詰まりの生徒に「苦しくないのか」と尋ねると、「いつもこうだし、気にならない」との答えが目立つという。
「普段から口を開けた若者が目立つのは、必ずしもボーッとしているわけではない。鼻の通りが悪くて鼻呼吸ができないのが原因ではないか」と松田医師はみる。
アレルギー疾患の影響で、集中力低下や低発育のほか、耳鳴りやイライラといった自律神経失調症を伴うケースもある。
「当人に自覚症状がないのも怖い」と松田医師。市内の学校に対して、花粉症シーズンに屋外での体育を避けたり、マスクを着用させるなどの対応を求めている。

生活指導で改善

松田医師の患者に四歳の男児がいた。重いアレルギー症状があり、血液検査で室内のほこり(ハウスダスト)やダニに対する強いアレルギー反応が確認された。
男児の両親は松田医師の知人だった。「原因に思い当たるふしがあった」という。室内は散らかり放題。患者の兄弟もアレルギー疾患に悩まされていた。
松田医師は、定期的に患者宅を訪問して屋内の清掃状態をチェック。ほこりが目立てば自ら掃除機をかけた。「一度発症したら、アレルギーの原因となる物質(抗原)を避けるのが最も有効な対処法だ」と生活改善を根気強く説いた。

四年後の検査では、ハウスダストやダニに対する抗体検査で大きな改善がみられ、症状も治まった。「薬の効果もあっただろうが、患者と保護者による自己防衛、つまり生活改善が欠かせない」と松田医師は強調する。

過剰な免疫反応

アレルギー疾患は、大気から吸い込んだり、飲食物として摂取したり、皮膚に触れたりした物質に対する過剰な反応をいう。
本来、身体に有害な細菌やウイルスだけに反応し、くしゃみや鼻水として体外に排出しようとする免疫機能(抗原抗体反応)。
しかし、反応が過敏すぎると日常生活に支障が生じる。
花粉症の場合、一定量の花粉を吸い続けた後に発症するとされ、発症のメカニズムは「コップの水」に例えられる。花粉を水に見立ててイメージすると分かりやすい。

大気中から吸い込んだ花粉(水)が体内のコップに少しずつたまっていき、ある時点であふれ出てしまう。以降、花粉症の症状が出現する。水があふれるタイミング、つまり、どの段階で症状が出るかは個人それぞれのコップの容量によって変わる。
「以前に比べて容量が小さなコップの若者が増えているのが、若年化の理由ではないか」との指摘がある。なぜだろうか…

無菌状態で脆弱

数字にばらつきはあるものの、若年層のアレルギー疾患の増加を指摘する研究が相次いでいる。一般的に次のような理由が挙げられている。

①アレルギーの原因物質(抗原)の増加=スギ花粉、ダニ、ハウスダストなど
②住環境の変化=マンションなど高気密住宅の普及で湿気がこもりやすく、ダニやカビが発生しやすい
③食生活の西洋化=高脂肪、高カロリー、食物繊維の摂取減少
④大気汚染=自動車の増加、宅地開発
⑤遺伝的要素=両親ともアレルギー素因を持つケースが増えた。

抗生物質の多用や清潔過ぎる生活が一因と指摘する研究者もいる。国立育成医療センター研究所の斎藤博久・免疫アレルギー研究部長は研究論文で、こう述べている。
「一九七〇年代後半から乳児死亡率は世界一の低水準を維持している。人類史上かつてない清潔な環境下で乳幼児をはぐくんできた。
(中略)抗生物質による無菌状態下における大量の花粉飛散などの状態に対して極めて脆弱である」
アレルギー疾患は遺伝しやすく両親とも患者の場合、子の世代はより重症化しやすい。アレルギー疾患となりやすい生活環境が定着しており、親から子の世代へとアレルギー体質のすそ野を広げているといえそうだ。

読売新聞に掲載されました。(2005年11月30日)

大川市の耳鼻いんこう科医で、市内の中学校などで学校医を務めている松田知愛さんが、花粉症などのアレルギー性鼻炎になる子どもが増えている現状を踏まえ、12月1日、市役所で小、中学校長らを対象に講習会を開く。

「花粉などに無防備な環境にも一因がある」として、春先のマスク着用の徹底や、運動会の開催時期を春から秋に戻すなどの対策をとるよう訴える。

松田さんは1993年から、市内の4中学校と大川樟風、三潴の両高校で検診を担当している。

今年4月の検診で、アレルギー性鼻炎の症状が見られた中学生(1、3年生)は全体の76%にあたる491人、両高校では85%にあたる843人に達していた。
93年は中学生が50%、高校生が60%程度で、年々増える傾向にあるという。

アレルギーは花粉などの抗原に体内の抗体が反応して起こるとされている。
体内の抗体が増え、少量の抗原でも過敏に反応するようになると症状が現れる。

松田さんは「アレルギー体質の子どもが増えていることもあるが、花粉の多い時期に、予防策を講じることなく屋外で授業をしたり、運動会を開いたりすることで、抗体が増えて重症化している可能性がある」と指摘。講習会では、対策を徹底するよう呼びかけるという。

これに対し、市教委学校教育課は「カリキュラムとの兼ね合いもあり、すぐには対応できないが、話を聞いたうえで検討したい」としている。

学校での講演が朝日新聞に掲載されました。(2005年2月3日)

大川市の耳鼻いんこう科医で、同市の中・高校など計6校で学校医を務める松田知愛さんが1日夜、市内の小中学校長と教頭ら約30人を対象に「町医者から見た大川現状と課題」をテーマに講演した。

こどもの大半に鼻アレルギーの疑いがある現状を紹介し、登下校時のマスク着用や授業中に窓を閉めるなどの対策実施を訴えた。

松田さんは3年から学校医で、現在は四つの市立中学と大川樺風、三潴の両高校を担当。今春の検診では中学生の8割、高校生の9割に鼻アレルギーの疑いがあった。
年々増加し、就学前児童が発症するなど低年齢化の傾向もあるという。

鼻アレルギーは、花粉やハウスダストなどの「抗原」を吸入することで起こり、鼻水、鼻づまり、目がかゆくなるなどの症状が出る。
睡眠不足になったり、聴覚や視覚などが低下したりすることもある。

松田さんは「小さい声が聞き分けられなくなったり、(鼻が詰まって)口で呼吸をしたりする子もいる。集中力が落ちて授業にも支障が出ているのではないか」と話す。

治療は抗原を吸入しないことが最も有効で、具体的には、マスクの着用、授業中は窓を閉める、うがいや鼻洗いの徹底、花粉の多い時期は野外での体育は避けることなどを訴えた。

家庭では、バランスの良い食事をとり、こまめな掃除、衣類などを外に干さないことなどを挙げた。

講演を聴いた石橋良知教育長は「保護者を含めた啓発が必要ではないか。出来ることから取り組みたい」と話した。

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